家の見積書や図面に「額縁」と書いてあって、絵を飾る枠のことかと思ったら、どうも違う。建築でいう額縁(がくぶち)とは、窓やドアなどの開口部のまわりに室内側から付ける細い化粧の枠のことです。壁紙や石こうボードの切り口を隠し、サッシやドア枠と壁の境目をきれいに区切る「見切り材」の役目をします。図面では見付け・見込み・チリの3つの寸法で指定され、この3つが読めれば打ち合わせで困りません。
額縁は窓やドアのまわりの「見切り材」
まず言葉の意味を、メーカーの用語集で確かめます。額縁は「窓・出入り口とその周囲の壁仕上材との接する部分を、見切るために取付ける角材」と、LIXILのリフォーム用語集に書かれています。開口部を四方または三方から囲む細い材で、絵の額縁のように見えることからこの名前が付きました。
家の壁は、柱の上に石こうボードを張り、その上に壁紙を貼って作ります。窓やドアの穴の所では、ボードと壁紙の切り口がむき出しになります。額縁はその切り口にかぶせて隠し、サッシやドア枠との段差をなだらかにつなぎます。額縁が無いと切り口がそのまま見え、壁紙の端がめくれてきます。
同じ「見切り材」の仲間に、床と壁の境目の巾木(はばき)、天井と壁の境目の回り縁(まわりぶち)があります。部屋の中で目に付く木の部材は、ほとんどがこの3つです。どれも「材料の変わり目を隠す」という同じ役目を持っています。
枠が支え、額縁が隠す。ケーシングは同じ物
打ち合わせでいちばん混同しやすいのが、枠と額縁の違いです。枠はサッシやドアを支える構造の部材で、額縁はその外側で壁との境目を隠す化粧の部材です。枠が無いと窓もドアも付きませんが、額縁は無くても家は建ちます。
洋室のドアまわりでは、額縁のことを「ケーシング」と呼びます。英語のcasingから来た言葉で、指している物は同じです。図面で「ケーシング枠」とあれば額縁付き、「固定枠」や「ノンケーシング」とあれば額縁無しの納まりです。
額縁無しの納まりでは、枠の縁を壁から少し出して、その段差で壁紙の端を止めます。壁紙を枠に巻き込むので「クロス巻き込み」とも呼びます。最近の住宅では、額縁を付けずにすっきり見せるこの納まりが増えています。どちらを選ぶかは、後の見出しで見た目と費用を比べます。
見付け・見込み・チリは図面に出る3つの寸法
額縁の寸法は、3つの言葉で指定されます。見付け(みつけ)は正面から見える幅、見込み(みこみ)は壁の厚さ方向の奥行き、チリは額縁の面が壁の面からどれだけ出るかです。「見付け30で統一」「チリは3で」のように、現場ではこの3つの数字で会話が進みます。
| 言葉 | 意味 | 目安の寸法 | 見た目への影響 |
|---|---|---|---|
| 見付け | 正面から見える額縁の幅 | 住宅は20〜40mm。目立たせるなら50〜70mm | 太いほど重厚に、細いほど壁と一体に見える |
| 見込み | 壁の厚さ方向の奥行き | 壁の厚さに合わせる | 窓では下の窓台の奥行きになる |
| チリ | 壁の面から額縁が出る段差 | 3mm前後。木製の枠で10〜15mmとする所もある | 段差があると壁紙の端が隠れ、0だと面がそろう |
見付けは、家じゅうの窓とドアで同じ幅にそろえると、線が通ってきれいに見えます。1か所だけ太い額縁があると、そこだけ目立ちます。チリの数字は、内装の会社の記事では3mm前後、大工の用語解説では木製で10〜15mmと、出どころで幅があります。図面に書かれた数字を、そのまま確かめるのが確実です。
窓は三方か四方、下の1本は窓台
窓の額縁には、囲み方が2つあります。上下左右の4本で囲む四方枠と、上と左右の3本にして下を広い窓台にする三方枠です。住宅では、下に小物を置ける三方枠が多く、下の1本は窓台や膳板(ぜんいた)と呼ばれます。
窓台は、4本の中でいちばん傷みやすい部材です。日が当たって色があせ、冬は結露の水が付き、鉢を置けば水がしみます。昔は無垢材でしたが、反りやすいので、今は集成材やシート貼りが増えています。鉢や加湿器を置くなら、受け皿を敷いてください。
窓の額縁は、カーテンレールやブラインドの取り付け位置とぶつかりやすい場所でもあります。額縁の見付けを決めるときに、カーテンをどこに付けるかを一緒に決めておくと、後で「レールが額縁に当たって付かない」という手戻りが防げます。
額縁を回すかクロスを巻き込むかで見た目と費用が変わる
新築やリフォームで施主が決めるのは、この選択です。額縁で囲む納まりは角が丈夫で工事が早く、クロスを巻き込む納まりは見た目がすっきりする代わりに下地の精度と手間がいる、という違いです。どちらが正しいということはなく、好みと予算で決めます。
| 比べる点 | 額縁で囲む(ケーシング) | クロス巻き込み(ノンケーシング) |
|---|---|---|
| 見た目 | 線が出て、落ち着いた印象 | 壁と一体で、すっきりした印象 |
| 角の丈夫さ | 高い。ぶつけても欠けにくい | 壁紙の角が欠けやすい |
| 工事の手間 | 少ない。誤差を額縁で吸収できる | 多い。下地が正確でないと隙間が出る |
| 費用 | 部材代が増える | 部材代は少ないが手間賃が増えることがある |
費用の目安として、工務店のブログには、ドアまわりのケーシングは1か所あたり平均2万5千円、20か所なら50万円の上乗せという数字が出ています(2026年9月時点で確認)。家の規模と製品で大きく変わるので、見積もりでは「額縁を付ける場所の数」を先に数えてから比べてください。
迷ったら、場所で分ける手があります。人がぶつかる廊下やリビングのドアは額縁で囲み、寝室の窓はクロス巻き込みにする、という分け方です。ただし同じ部屋の中で混ぜると、線がそろわず落ち着かないので、部屋ごとにどちらかにそろえます。
材質は木・シート貼り・樹脂・金属の4つ
額縁の材質は、使う場所で決まります。住宅は木かシート貼り、水がかかる浴室や洗面は樹脂、店舗やオフィスはアルミやスチールが普通です。今の住宅でいちばん多いのは、MDFという板に木目のシートを貼った「シート貼り」です。
木は無垢材や集成材に塗装した物で、色があせたり欠けたりしても、パテで埋めてステインで塗り直せます。シート貼りは色が均一で安いのが利点ですが、シートがはがれると下のMDFが見えるので、上から化粧フィルムを貼って直します。どちらも、既製のドアと同じシリーズで選ぶと色と面の形がそろいます。
樹脂は水に強く、浴室の窓まわりに限って使います。アルミやスチールは直線がきれいに出て丈夫なので、オフィスや店舗で選ばれます。住宅で金属の額縁を使うのは、ガレージや土間のような、物がぶつかる場所くらいです。
打ち合わせで決めることは、回す場所・見付け・チリの3つ
ここまで分かれば、打ち合わせで聞かれることに答えられます。額縁を回す場所(窓・ドア・ニッチ・点検口のどこに付けるか)、見付けの幅、チリの有無、この3つを決めれば、額縁の指定は終わりです。現場では「額縁を回す」「額縁で納める」と言い、どちらも額縁で囲んで仕上げるという意味です。
- 回す場所を決める。窓・ドア・ニッチ・点検口のうち、額縁を付ける所と、クロス巻き込みにする所を分ける
- 見付けを決める。住宅なら20〜40mmの中で1つに統一する
- チリを決める。壁から出すか、面をそろえるか。数字は製品のカタログに合わせる
- 材質と色を決める。ドアと同じシリーズにすると面の形までそろう
- カーテンレールと巾木との取り合いを確かめる
リフォームなら、まず家の窓の額縁を定規で測ってみてください。見付けが何mmで、壁からどれだけ出ているかが分かれば、今の納まりがどれかが分かり、同じ物で直すか、変えるかを決められます。図面の「額縁」の行を見て、この3つの数字を探すところから始めるのが早道です。
元々は充電式のポータブル電源や電動工具分野の専門アドバイザー。現在はキッチン家電や生活家電、カー用品まで幅広く担当しています。「毎日使うものほど、扱いやすさで選ぶ」が持論。
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