日本の絵画は「日本画」と呼ばれ、岩絵具・膠(にかわ)・胡粉・墨を、和紙や絹に描いた絵のことです。この名前は明治になって西洋の油絵が入ってきたときに、区別するために付けられました。名前は新しく、画材と描き方は古墳時代から続いています。
美術館で日本画と洋画のどちらか分からない、日本画の色はなぜ粒で光って見えるのか、掛軸と屏風は何が違うのか。画材店と美術館の解説、骨董の専門店の記事の合わせて5本を読み比べ、日本画の定義、洋画との違いの早見表、見分けるチェックポイント、画材、歴史の流れ、種類と流派、家での飾り方を、初めての人向けに順に書きます。
日本画とは。岩絵具と膠で和紙や絹に描いた日本の絵画
日本画の定義は「日本画の画材で描かれた絵」です。鉱石を砕いた岩絵具、貝殻を焼いて作る白い胡粉、木の煤を固めた墨、金箔を、動物の皮や骨から取った膠で和紙や絹に定着させて描く。この画材の組み合わせが日本画で、油絵具でキャンバスに描く洋画と分かれます。
「日本画」という言葉は明治以降のものです。鎖国が終わって油絵が入ってきたとき、それまで大和絵、狩野派、円山・四条派と流派ごとに呼ばれていた絵をまとめて「日本画」と呼ぶようになりました。現代では、日本画の画材で洋画の構図を描く作品も増え、線引きはゆるくなっています。
日本画と洋画の違い早見表。画材・支持体・表現で分かれる
| 項目 | 日本画 | 洋画 |
|---|---|---|
| 絵具 | 岩絵具、胡粉、墨、金箔 | 油絵具、水彩絵具、アクリル |
| 絵具を貼り付けるもの | 膠(動物性の接着剤) | 油、アラビアゴム、樹脂 |
| 描く面(支持体) | 和紙、絹 | キャンバス、洋紙、板 |
| 色の作り方 | 混ぜられない。塗り重ねて作る | パレットで混ぜて作る |
| 表現 | 線で形を取り、背景を省き、余白を残す | 光と影、遠近法で現実に近づける |
| 仕立て | 掛軸、屏風、襖、額 | 額 |
| 合う気候 | 湿気の多い日本。層を薄く重ねる | 乾いた西洋。厚く塗れる |
一番の違いは色の作り方です。岩絵具は粒の大きさで色の濃さが決まり、混ぜると濁るので、日本画は色を混ぜず薄く塗り重ねて作ります。この不自由さが、余白と線を生かす日本画の表現につながりました。
日本画を見分けるチェックポイント。4つ見れば分かる
色が粒で、光を受けてきらっと見える
岩絵具は鉱石の粒なので、近くで見ると色に粒があり、角度によって光を反射します。油絵の平らでつやのある面とは見え方が違います。緑青(孔雀石)、群青(藍銅鉱)、辰砂の赤は、天然の石そのものの色です。
下地が和紙か絹。紙や織り目の質感がある
和紙は繊維が長くしなやかで、絹は細かい織り目があります。額に入っていても、表面の質感で分かります。厚く盛り上がった絵具、キャンバスの布目、油のつやが見えたら洋画、紙や絹の質感の上に薄い色の層が見えたら日本画です。
線で形を取り、背景を省いて余白がある
日本画は墨や細い線で輪郭を取り、背景を描かず余白を残す作品が多いです。洋画は輪郭線を使わず、光と影で形を見せます。同じ花を描いても、線があるか、背景が塗られているかで見分けられます。
掛軸・屏風・襖に仕立てられている
巻いて収納する掛軸、折りたたむ屏風、部屋を仕切る襖は、日本画ならではの仕立てです。岩絵具と膠は乾くと固くなるので、巻く掛軸には厚塗りが向かず、薄く描かれています。額に入った日本画もありますが、仕立てが掛軸や屏風なら日本画と見て間違いありません。
日本画の画材。岩絵具・膠・胡粉・墨・金箔の役割
| 画材 | 原料 | 役割と特徴 |
|---|---|---|
| 岩絵具 | 天然:鉱石約40種を砕いて400〜500色。新岩:人工の石を1200℃前後で焼いて約1,000色 | 粒が粗いほど濃く、細かいほど薄い。混色できない |
| 膠(にかわ) | 動物や魚の皮・骨を煮出したコラーゲン | 絵具を紙に貼り付ける接着剤。湯煎で溶かして使う |
| 胡粉(ごふん) | 貝殻を砕いて精製した白(鎌倉時代までは鉛白) | 白色、下地、盛り上げ、ほかの色と合わせて明るくする |
| 墨 | 木を燃やした煤を膠で固める | 線と濃淡。硯で磨るほど濃くなる |
| 金箔・銀箔 | 金や銀を薄く延ばしたもの | 背景や雲に貼る。屏風の金地 |
| 和紙・絹 | 楮などの繊維、絹織物 | 薄くしなやかで膠と相性がよい。絹の歴史が長く、現代は和紙が多い |
岩絵具は絵具の状態では売られておらず、粉の顔料を自分で膠と練って使います。粒の番手が10段階ほどあり、同じ石でも粗い粒は濃く、細かい粒は白っぽく見えます。この粒の選び方が、日本画の色の深さを決めます。
日本画の歴史の流れ。古墳時代から現代まで
| 時代 | 出来事 |
|---|---|
| 古墳時代 | 壁画に顔料を使う。日本の絵具の始まり |
| 平安時代 | 中国の技法を取り入れ、日本の風景を描く「大和絵」が生まれる。絵巻物が広まる。12世紀には主な天然絵具がそろう |
| 鎌倉〜室町時代 | 禅宗とともに水墨画が入り、山水画が盛んになる。室町から桃山は狩野派が力を持つ |
| 江戸時代 | 浮世絵が生まれ、墨摺から錦絵へと色が増える。屏風や襖絵が発展。円山・四条派が人気 |
| 明治時代 | 油絵が入り、区別のため「日本画」の名が生まれる。東京美術学校ができ、展覧会が始まる |
| 戦後〜現代 | 人工の新岩絵具で色が約1,000色に増え、表現が広がる。洋画の構図と日本画の画材を合わせた作品が増える |
絵具そのものは江戸後期まで大きく変わらず、19世紀にベルリンの藍(ベロ藍)が大量に入って浮世絵の青が変わりました。戦後の新岩絵具で色数が倍以上に増え、現代の日本画の鮮やかさにつながっています。
日本画の種類と流派。大和絵・水墨画・狩野派・琳派・浮世絵
- 大和絵:平安時代に生まれた、日本の風景や物語を描く絵。絵巻物に多い
- 水墨画:墨の濃淡だけで描く。禅宗とともに広まり、室町時代に盛んになった
- 狩野派:室町から江戸まで幕府や大名に仕えた絵師の一門。屏風や襖の金地の絵
- 琳派:尾形光琳に代表される、金銀と装飾的な構図の絵
- 円山・四条派:円山応挙が始めた、写生に基づく絵。仔犬の絵で知られる
- 浮世絵:江戸の町人文化から生まれた木版画。葛飾北斎、歌川広重
- 現代日本画:明治以降の展覧会を中心に発展。伝統の画材で新しい表現を試みる
流派の名前は「誰に習ったか」で分かれています。美術館の解説で流派の名前を見たら、狩野派なら金地の屏風、琳派なら装飾的な構図、円山派なら写生、浮世絵なら木版と、絵の見方の手がかりとして使えます。伊藤若冲のように、どの流派にも入らず独自の絵を描いた画家もいます。
日本画を家で楽しむ。飾り方と手入れ
日本画の画材は湿気と光に弱く、飾り方で持ちが変わります。直射日光の当たらない壁に飾る、エアコンの風が直接当たる場所を避ける、掛軸は季節ごとに掛け替えて巻いて休ませる、額装は紫外線を通しにくいアクリルにする。この4つで、岩絵具の色と膠のはがれを防げます。
掛軸を巻くときは、ゆるく、湿気の少ない日に行います。屏風や襖の絵は、たたむときに絵具の面どうしが触れないよう薄紙をはさみます。手で絵の面に触れないことが、どの仕立てでも共通の決まりです。
日本画は「画材で決まる日本の絵画」。粒と余白と仕立てで見分ける
日本の絵画である日本画は、岩絵具・膠・胡粉・墨・金箔を和紙や絹に描いた絵で、名前は明治にできましたが、画材と描き方は古墳時代から続いています。色が粒で光る、下地が和紙か絹、線と余白がある、掛軸や屏風に仕立てられている。この4つを見れば、初めての人でも日本画と洋画を見分けられます。
次に美術館へ行ったら、絵に近づいて色の粒と紙の質感を見てみてください。それだけで、解説を読む前に日本画かどうかが分かります。
元々は充電式のポータブル電源や電動工具分野の専門アドバイザー。現在はキッチン家電や生活家電、カー用品まで幅広く担当しています。「毎日使うものほど、扱いやすさで選ぶ」が持論。
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