手元のアクリル絵の具でTシャツやトートバッグに絵を描きたい。でも、洗ったら落ちるのか、布が固くならないかが心配で手が止まる。アクリル絵の具の布への使い方で迷うのは、たいていこの2点です。
落ちるかどうかを決めるのは絵の具の銘柄ではなく、布用メディウムを混ぜるかどうかと、乾かしてからアイロンをかけるかどうかです。布の準備から洗濯まで、失敗しやすいところを先に押さえておきます。
普通のアクリル絵の具は布に使える?答えはメディウム次第
普通のアクリル絵の具でも布に描けます。洗う物に使うなら、布用メディウムを絵の具と同じ量だけ混ぜてください。アクリル絵の具は乾くと樹脂の膜になって水をはじくので、紙だけでなく布や木にも定着します。
ただし、絵の具だけで厚く塗ると膜が固くなり、布を折り曲げたときにひび割れます。洗濯すると割れた所から色が落ちます。メディウムは膜をやわらかくして、布の繊維と一緒に曲がるようにする物です。
洗う物には布用メディウムを同じ量だけ混ぜる
Tシャツ、トートバッグ、クッションカバーなど洗う物は、絵の具1に対してメディウム1が目安です。定着を強くしたいときは2まで増やせます。それ以上入れると色が薄くなり、かえって落ちやすくなります。
混ぜるときはパレットの上で、ヘラか割り箸で練ります。水を足すほど定着は弱くなるので、薄めたいときも水は少しだけにしましょう。
飾るだけなら絵の具そのままでかまわない
額に入れて飾る布、洗わないのれんや旗なら、メディウムは要りません。絵の具をそのまま塗って乾かせば終わりです。
固くなっても困らない物には、手間をかけないのが正解です。
布専用の絵の具はアイロンなしで洗える物もある
最初から布用に作られた絵の具もあります。メーカーによってはアイロンでの熱処理が要らず、乾けばそのまま洗濯できると説明しています。
これから絵の具を買う人で、洗う物にたくさん描くなら、布用の絵の具のほうが手間が減ります。手持ちのアクリル絵の具を使い切りたい人は、メディウムを足す方法で十分です。
向くのは綿と麻で化学繊維100%は避ける
向くのは綿と麻です。ポリエステルやナイロンが100%の布は、絵の具が繊維に入らず、洗うと落ちやすいので避けます。
綿は繊維に絵の具が少ししみ込み、色が乗りやすい布です。麻も同じです。レーヨンのような再生繊維も使えます。
綿とポリエステルの混紡は、綿の割合が高いほど定着します。品質表示のタグで「綿100%」か、綿が65%以上の物を選んでください。
| 布の種類 | 定着 | 身近な物 |
|---|---|---|
| 綿、麻 | 落ちにくい | Tシャツ、トートバッグ、手ぬぐい |
| 綿とポリエステルの混紡 | 綿の割合が高いほど落ちにくい | ポロシャツ、エプロン |
| ポリエステル、ナイロン100% | 落ちやすい | スポーツウェア、傘、レインコート |
デニムやキャンバス地は綿なので描けます。ただし表面がざらつくので、細い線はにじみます。太い線や塗りつぶしの絵に向く布です。
布専用の絵の具にはポリエステルに使える物もありますが、普通のアクリル絵の具では避けたほうが安全です。
描く前の準備は水洗いとアイロンと下敷きの3つ
描く前にやることは3つ。布を水洗いして糊を落とす、アイロンでしわを伸ばす、布の下に厚紙か新聞紙を敷く、です。
- ステップ1 布をぬるま湯につけて手でもみ洗いし、陰干しする。洗剤と柔軟剤は使わない
- ステップ2 乾いたらアイロンをかけて、しわと折り目を伸ばす
- ステップ3 描く面の下に厚紙を入れる。Tシャツは表と裏の間に入れて、裏まで絵の具が抜けないようにする
新品の布には糊が付いていて、そのまま描くと絵の具が糊の上に乗るだけになります。洗濯すると糊と一緒に絵がはがれるので、洗いは飛ばせません。
柔軟剤を使わないのは、繊維の表面に油分が残って絵の具をはじくからです。
下書きは、熱で消えるボールペンか、水で消えるチャコペンで描きます。鉛筆は絵の具の下で線が残ります。
厚塗りが布を固くするので薄く2回か3回に分ける
1回で色を出そうとせず、薄く塗って乾かし、また塗る、を2回か3回くり返します。厚く塗るほど乾いたあとの膜が厚くなり、布がゴワゴワになります。
筆はナイロンの筆が向いています。動物の毛の筆は絵の具を含みすぎて、布の上で広がります。
1回目は下地です。輪郭の内側を薄く塗り、指で触って色が付かなくなるまで待ちます。目安は30分から1時間です。
2回目で色をしっかり乗せます。ムラが残ったら3回目です。ここで欲張って厚塗りに戻らないでください。
広い面を塗るなら、スポンジで軽くたたいて色を置く方法もあります。筆より薄く均一に乗り、乾きも早いです。
絵の具の量は、布用の絵の具で20mlのチューブ1本がA4サイズ1枚分と説明しているメーカーがあります。Tシャツの胸に手のひらほどの絵なら、1色あたり1本で足ります。
定着は1日乾かして当て布アイロン3分から5分
描き終わったら1日以上乾かし、当て布をして中温のアイロンを裏側から3分から5分当てます。これで絵の具の膜が繊維に密着して、洗濯に耐えるようになります。
乾かす時間は最低1日、厚めに塗った所があるなら2日です。表面が乾いて見えても中が乾いていないことがあり、そこにアイロンを当てると絵の具が当て布に移ります。
- ステップ1 絵の上に薄い綿の布(ハンカチや手ぬぐい)を当てる
- ステップ2 アイロンを中温にして、蒸気は切る
- ステップ3 一か所に止めず、ゆっくり動かしながら3分から5分当てる
- ステップ4 裏側からも同じように当てる
絵の具の上に直接アイロンを当てるのはやめてください。膜が溶けてアイロンに付き、絵もつぶれます。
洗濯は初回だけ単独で裏返してネットに入れる
最初の1回か2回は、その布だけを単独で洗います。裏返して洗濯ネットに入れ、中性洗剤とぬるま湯で、こすらずに洗ってください。
初回に単独で洗うのは、余分な絵の具が他の服に移るのを防ぐためです。2回目以降、洗い水に色が出なくなったら一緒に洗ってかまいません。
- 漂白剤は使わない。色が抜ける
- 乾燥機は使わない。熱と回転で膜が割れる
- 手洗いするときも絵の部分をもまない
- 干すときは裏返して陰干し。直射日光で色があせる
洗ったあと、絵の部分が最初より少しやわらかくなります。これは正常です。厚塗りで固くなった布も、数回洗ううちに少しなじみます。
描いた布を長持ちさせる3つの決まり
決まりは3つ。絵の上にアイロンを直接当てない、洗う回数を減らす、色がかすれたら上から塗り足す、です。
絵の具の膜は洗濯のたびに少しずつ削れます。毎日着るTシャツより、週1回使うトートバッグのほうが長く持ちます。
色がかすれてきたら、同じ手順で薄く塗り足し、乾かしてアイロンを当て直します。最初と同じ絵の具を少し残しておくと、色が合います。
保管するときは、絵の面を内側にしてたたみます。絵の面同士を重ねると、暑い時期にくっつくことがあります。
元々は充電式のポータブル電源や電動工具分野の専門アドバイザー。現在はキッチン家電や生活家電、カー用品まで幅広く担当しています。「毎日使うものほど、扱いやすさで選ぶ」が持論。
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