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藤本由紀夫展を振り返って

ゲスト・キュレーター 尾崎佐智子

今回、高砂屋という特殊な施設で現代美術の展覧会、しかも場の魅力を生かすインスタレーションの作家の個展を企画することを依頼された。時間的な余裕がほとんどなく、予算的にも極めて厳しかったが、会場となる高砂屋の展示室、特に土蔵の空間的な魅力に強く魅かれ、美術館やギャラリーのホワイトキューブとは異なった作品展示の可能性を探るべく、ゲスト・キューレーターとして展覧会に関わることにした。このような特殊な会場を使いこなすことのできる作家は私の知る限り、日本に多くは存在しない。直ちに思い浮かべた藤本由紀夫氏に出品を依頼し、会場の下見をお願いした。多忙極まりない藤本氏の快諾を得ることができたのは、ひとえに高砂屋という空間の魅力に負っているだろう。

展覧会を準備するにあたり、次の二点に留意した。まず、高砂屋という場が持つ力を最大限に引き出す為に空間には極力手を加えず、あるがままの状態で作品を展示すること。第二に展覧会をトータルに演出する為に、展示のみならず、DMや看板にいたるまで統一したデザイン・コンセプトを打ち出したことである。今回、県内外から多数の来場者があり、県内だけでなく全国規模の新聞や美術雑誌にも取り上げられたが、多くの批評の中で国際的に活躍する有名作家の作品を鳥取で見ることができた点ではなく、藤本展を通して高砂屋の魅力を再発見できた点が評価されていたことは、企画者の意図がある程度反映されていたことの証左であるように思われる。
個人的には収穫の多かった企画であるが、企画を今後発展させるために最後に幾つかの苦言を呈しておきたい。まずゲスト・キュレーターの仕事の内容があまりにも不明確である。会場となった高砂屋の管理のずさんさを勘案するにせよ、開錠や施錠、さらには監視といった本来ならば全く無関係な仕事がゲスト・キュレーターに課された点は異常である。また経費に関しても、今回は作家の協力もあって低予算で開催することが可能であったが、これは異例であって、このレべルの展覧会を今後企画するためには、おそらく今回とは一桁違う予算が必要であり、これを前例として、以後の企画が立案されることはあってはならないと考える。
多くの困難があったにもかかわらず、鳥取でこのような質の高い展覧会が実現できたのは、藤本由紀夫氏をはじめ、現場のスタッフ、主催者の鳥取大学の石谷先生、鳥取市で担当いただいた鈴木さん他、関係者の協力のおかげである。最後にこの場をお借りして、厚く御礼を申し上げたい。「町家における現代美術展」という試みは鳥取では初めてであったようだが、今後もこのような新しいイベントを継続的に行うことこそが、真の意味での地域活性化につながるのではないだろうか。

4.今後の展開と活用の促進に向けて

今回取り上げたオールタナティブスペース創出事業(=空き店舗や廃校等、現在使われていない施設等を、芸術文化を用いて、芸術文化の育成にも資すべく活用・再生して、地域の活性化に寄与すること。)の活用事例は、わずかに4例にとどまり、実施文化イベントとしては現代演劇、ダンスワークショップ、ジャズ・ライブコンサート、そして現代美術という限られたものであった。ただ、それぞれの事業においては、異なる実施形態、すなわち、実施形態としての主催(ゲスト・キュレーター方式を含む)、共催、実行委員会方式を選択することにより、本事業の検証の幅が広がり、多様性を確保することができた。
 各事業については、すでに成果と課題等について詳しく述べられているから、繰り返さず、ここでは最後に、簡単に、本調査のまとめとして、こうした事例をどのように今後に活かすかを考えてみたい。
 本報告書「2-2.調査対象施設及び実施イベントの選定に当たって」の項で事業実施に先立つ予備的検討について言及したが、そうした検討は今後も不可欠であろうし、再確認する必要があるだろう。
その上で、考えざるを得ないのは、こうした事業を地域に根ざした文化創造の拠点形成へとつなげることであろう。当然のことながら、今回は、現代演劇(「鳥の劇場」)の場合を除いて、当該大学が実質的に事業を企画し運営した。鳥取県をはじめとする各方面の協力を得ながら、試行錯誤を繰り返し実現にこぎ着けることができた。準備期間も十分に取れたというわけではなかったが、来場者の満足度もはなはだ高いものであったし、低未利用空間の活用法には驚きと賛同の声が多く寄せられた。実施事業の数は少ないものの、鳥取の住民にとっても意義のある事業と言える成果は上がったのではなかろうか。
こうした事業の継続を望む声も上がっていることもあり、事業の継続・展開を考えることも必要であろう。その際には、今回の事業実施を通じて連携協力していただいた人々のネットワーク化を図り、市民の、地域住民の参加度を高めるとともに、ノウハウの蓄積と共有化を図ることが重要であろう。そして本事業が文化を通じた産官学による事業へと発展し、文化と経済の好循環を招く地域活性化へと展開していくことが期待される。
オールタナティブ・スペースを活用した文化創造拠点の形成へ向けて

-鳥取県におけるオールタナティブ・スペースを活用した文化創造拠点形成に向けた調査研究-

編集・発行
鳥取大学地域学部(附属芸術文化センター及び地域文化学科)
〒680-8551鳥取市湖山町南4-101
TEL/FAX 0857-31-5162

担当
附属芸術文化センター:高阪一治、石谷孝二、新倉健、五島朋子
地域文化学科:野田邦弘、長柄裕美、榎木薫

平成19年3月発行

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