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3-4.「現代美術の展示及び講演会」による旧商家の活用(鳥取市文化交流施設)

現代美術「藤本由紀夫展」の展示及び講演会の開催

3-4-1.事業の目的

鳥取県高等教育機関「知の財産」活用推進事業調査研究における今回の調査研究課題「鳥取県におけるオルタナティブスペースを活用した文化創造拠点形成に向けた調査研究」の一環として、低未利用空間の中から適切なイベント実施場所を選定して、その場を活用した「現代美術の展示」を行った。鳥取では普段なかなか出会うことの少ない質の高い現代美術の、「場」を活かした斬新な手法による展示を実現することにより、低未利用空間の新たな活用を図り、地域住民、及び美術界にインパクトを与えることを目指した。
 一定の質を担保した、ユニークな芸術文化の表現を提示し、またそうした低未利用空間の新たな活用策を提起することにより、とりわけ県内外の表現者、アーティストやプロデューサーなどに情報の発信を行い、鳥取への関心を喚起して、鳥取への注目度を高めることも、事業実施の大きな目的のひとつである。

3-4-2.「藤本由紀夫展」の展示

●実施に至る経緯

調査研究の実施主体である鳥取大学地域学部(附属芸術文化センター及び地域文化学科)には、事業実施の全般にわたり管理・運営を行い、所期の目的を達成する全責任がある。とりわけ附属芸術文化センターには美術制作を専門とする教員が配置されているとしても、今回実施する、インスタレーションとして先端的な現代美術を専門に行う者ではない。また、こうした事業をプロデュースし、かつ一定の質を担保した展示を扱うことのできる適任者も見当たらない。種々検討を重ねた結果、実施主体の知的・人的ネットワークを最大限に活用して、適任者を外部に求めることになった。以下、適任者を外部に求めるにあたり、条件を記す。
 今回の調査研究課題の趣旨について十分な理解があり、連絡が密に取れること。
 実施場所の特色について十分認識し、その特色を生かした、インスタレーションとしての現代美術を、人を含めて実際にプロデユ―スできること。
 質を担保したこうした事業の実施に実際的な経験と能力を有し、一定の評価を得ていること。
 こうした条件を満たす者の中で、ゲストキュレーターとして鳥取在住の尾崎佐智子氏(元滋賀県立美術館学芸員)を招聘した。現代美術担当の学芸員の経験を生かし、高砂屋全体の空間を生かすにふさわしい作家として藤本氏が推薦され、事業の実現に至った。

●展示の内容

今回の現代美術のイベントには展示内容の企画から実施に至るまで、尾崎氏と協議を重ねる形で進めた。会場となったのは明治時代の商家の典型的な建築スタイルを示す「高砂屋」である。こうした高砂屋の空間を活用できる作家として、サウンドアート(音の出る作品)の作品で知られる現代美術家、藤本由紀夫氏(55)を提案したのも、先にも触れたように、尾崎氏である。藤本氏には現地を事前に観てもらい、新作を含む代表作約30点を和室や土蔵に展示することとした。
 鳥取市の中心部、元大工町にある「高砂屋」(城下町とっとり交流館)は、綿商いを営む商家「池内邸」の店舗兼住居を改装した文化施設であり、鳥取市の文化交流の拠点として整備されて、2006年4月にオープンしている。現在、鳥取環境大学新事業研究会の学生が鳥取市の指定管理者として管理、運営にあたっている。2階の多目的交流室等を有料で貸し出しを行っているがその稼働率は残念ながら低い段階に留まっている。
 1階にはコーヒーやそばを提供する休憩室が設けられ地域住民の憩いの場になっているが、ここもまたあまり、多くの利用者がいる状況にはなっていない。
 建物自体はたいへん魅力的であり、駐車場も3台とめることができ、近くには市役所の駐車場や無料駐車場もあることなどから便利な施設のひとつであるといえる。
 藤本由紀夫(1950年名古屋生まれ、大阪在住)氏は1980年代半ばよりオルゴールなど身の回りの「音」を発するオブジェを用いたユニークな作品を制作し、「サウンド・アート」と呼ばれる新たな表現領域を切り開き、現在、国際的に高い評価を受けている。2001年の第49回ヴェネツィア・ビエンナーレの日本館代表作家の一人で、2007年開催の第52回ヴェネツィア・ビエンナーレに参加予定。国内外での個展開催は多数。今回は鳥取での初めての個展である。
一見すると場違いな組み合わせに思える、和室や土蔵といった和の空間に、藤本氏の現代的なサウンド・オブジェが配置され、見る者を普段体験したことのない新しい世界へと誘った。
なかでも土蔵は一度も公共的な目的で使用されておらず、尾崎氏や鳥取市の職員の協力も得ながら内部の片付けや掃除をして、展示会場として使用する準備にあたった。

実施日時  2007年1月16日 (火)~28日(日) 午前9時~午後5時
会場    高砂屋(城下町とっとり交流館)
参加者   約500名

3-4-3.「藤本由紀夫」講演会

作家によるアーティスト・トークとして、講演会は、高砂屋2階の和室(多目的交流室)においてスライドを使用しながら行われた。
 現在の作家活動の原点やその後の展開を解説しながら、藤本氏の作品が現代美術において独自な位置を占めユニークなものであることについてわかり易く話され、多くの聴講者にとって興味深い講演会となった。

○  実施日時  2007年1月21日(日)  午後2時~4時
○  会場     高砂屋2階和室(多目的交流室)
○  参加者    約60名

3-4-4.事業の成果と意義

今回は低未利用空間に一定期間、質の高い現代美術を展示したが、ここに予想を上回る多くの人々が訪れ、しかも来場者アンケートが示すように、多くの人々から高い評価を得たことは、低未利用空間の活用方法として一定の成果があったといえるであろう。特にそれまでまったく使用されないでいた、蔵をも利用して、作品を展示したことは、今後の蔵を含めた高砂屋の活用法に道を開くことになったと思われる。
 アンケートへの回答には、展覧会の感想として「珍しい作品に触れ、おもしろい体験ができた。」「商家や土蔵を利用したところがユニークであった。」との声が多く寄せられた。好意的な感想が多く、来場者の満足度は高いものがあったと考えられる。なかでも「土蔵・古い商家の使い方が面白い」、「建物の雰囲気が良い」という意見が多い。また、既存の美術館ではなく古い建物を利用したことで、「親しみを覚えた」、「ふらっと立ち寄れる」などの意見も見られた。
 こうした回答からすれば、これまであまり美術そのものに縁がなかった人にも、このような気軽に立ち寄れる場所で、何か面白そうな催しを開催したことにより、芸術と出会う敷居の低い、意外な場所を提供することができた、と言えるだろう。
 テレビ、ラジオ、新聞等のメディアにも多く取り上げられた。来場者が展覧会を知ることになった方法については、アンケートによれば、多い順に、「授業の一環」を別にして、新聞や口コミ、テレビ、立て看板と来るが、特徴のある目立つ立看板を市内の要所に立てたことも成功の一因と思われる。
 以上の点から言えば、今回の事業は、現代美術という一見すれば難しそうに聞こえる先端的なアートが、親しみのわく音の手段を活かし、それとクロスして展示を行なったこと、しかもその会場が、蔵を含む古めかしい旧商家であったという意外性も手伝い、両者が重層的に関係して相乗効果を発揮し、高砂屋という低未利用空間を十分に活用した、と言えるであろう。
 今回の事業の企画・運営を通じて、関係自治体と大学との連携の強化充実がはかられ、今後のこの種の事業展開が期待される。

3-4-5.低未利用空間を活用するにあたっての問題点と今後の課題

今回、現代美術展の会場として使用したのは、これまで述べてきたように、旧商家の活用である「高砂屋」、つまり、現在は鳥取市の文化交流施設であり、指定管理者の管理運営対象となっている。
 当然のことながら、事業の実施に当たっては、指定管理者、及び鳥取市の企画推進部文化芸術推進課と協議・連携して事業に当たった。様々な面で協力いただいたことをまず感謝したい。
 とはいえ、会場使用に当たり、様々な問題が浮上した。例えば、それまで使われていなかった蔵を使用することについては、会場整備のための予算化が必要になることが考慮されたが、早急な予算措置は困難であり、現実的な対応が求められた。作家の下見に市の職員が立ち会い要望を聞いたうえで、作家の意向、建築文化財の専門家の意見を踏まえて対処してくれることになったが、作家の意向で大掛かりな作業の必要性はなくなった。蔵の鍵についても、できるだけ現在あるものを使い、直せるものは直しながら使うことを確認した。市で簡易鍵を取り付けることでとりあえず済ませたが、本格的に使用しようとすればしっかりとした鍵は必要であろう。
 今回の美術展は蔵の潜在的な価値に気付かせてくれたと言えるであろう。それだけに、予算化をして利用しやすくなれば、その有効活用の可能性は広がり、蔵の利用価値は高まるであろう。
 今回の高砂屋のような、指定管理者の管理運営対象をイベントの実施会場に選定し、円滑に事業を進めるには、会場を使用する者、及び自治体(ここでは鳥取市)と指定管理者との円滑な意思の疎通が図られる必要があるだろう。とりわけ後者二者の意思の疎通が一層図られ、利用者の便に資する必要があるのではないかと考えさせられた。
 今回の事業実施に当たっては、先にも述べたように、ゲストキュレーターを招来したことがその特色のひとつである。これに伴い、問題点も浮き彫りとなった。予算措置を含む本事業実施にかかる準備の不足(十分な準備のための時間がとれなかった等。)がその基本的な要因のひとつと考えられるが、この報告書では、今後の事業改善に資するために、ゲストキュレーターからの指摘も併せて載せることにした。

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