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3-3.「ジャズ・ライブコンサート」による歴史的商業施設の活用(酒造倉庫)

DOZO de Live at Home Vol.1 門脇大輔 Jazzy Live 実施報告書

DOZO de Live at Home 実行委員会

1)開催にいたる経緯

倉吉は古くからの城下町であり、町のシンボル打吹山周辺の「打吹地区」は、江戸時代中・後期から商業地区として栄えてきた。玉川沿いの土蔵群をはじめ、今なお独特な商家の町並みを残しており、平成10年には国の「重要伝統的建造物群保存地区」の選定を受けている。
 一方で、昭和40年代以降全国的に広がった商業の郊外化の波にさらされ、中心市街地の空洞化が進み、伝統的町並みにも空き家・空き地が増加する傾向が続いている。さらに、産業の脆弱さを背景に若者の定住率は低下し、高齢化は進む一方である。平成10年、保存地区を中心に第三セクターの観光スポット「赤瓦」をオープンし、観光に活路をみいだそうと努力を続けているものの、集客可能な地域が限定されているなど問題点も多く、必ずしも十分な成果を上げているとは言い難い。
 鳥取大学地域学部地域文化学科では、2年生の専門科目授業「地域文化調査」の一環として、打吹地区においてフィールドワークを実施している。本調査は、大学生の目を通して「打吹地区」の現状を分析し、まち本来の文化的魅力を活かしつつ若者の地元定住化を促進する中心市街地活性化案の構築を目指すものである。
 この調査の過程で、調査グループは、歴史に培われた文化的奥行きと新たな活用可能性を秘めた「高田酒造倉庫」という空間に出会った。アーケード街の向かいに位置する高田家主屋は江戸時代後期(1843年、天宝14年)の建物だが、この倉庫は今からおよそ100年前に建てられた。高田家では、古くから醤油醸造業を営んでいたが、明治7~8年にはそれに加えて酒造業も始めた。この建物は、高田家が醤油醸造を中止する昭和30年代までは醤油蔵として、その後は酒造倉庫として使われ、現在に至っている。今後の活用方法を現在模索中とのことである。 
 この空間の活用可能性の一つとして、学生・スタッフの一部からライヴコンサートの構想が生まれ、学生・スタッフ有志で企画準備をはじめた。鳥取大学地域学部が鳥取県の「高等教育機関『知の財産』活用推進事業」の一環として取り組んでいる「鳥取県におけるオールタナティブ・スペースを活用した文化創造拠点形成に向けた調査研究」予算、及び、鳥取大学教育・研究改善推進費(学長裁量経費)「倉吉市打吹地区活性化調査研究」予算から補助を得て、これを予算上のベースとして企画立案した。
 出演アーティストについては、鳥取県中部地区出身で、プロとして東京で活動する若手ミュージシャン門脇大輔氏に依頼した。門脇氏には、敢えてコンサートホールを使用せず空間の活用可能性に挑戦しようとする主催者の意図を理解していただき、また、彼自身が模索する新たな活動の方向性と地元倉吉に寄せる思いを具体化する場として、企画への参加を快諾いただいた。

2)開催概要

開催概要は以下の通り。
【日 時】  平成18年11月19日(日) ①14:00 ②18:00 (2回公演)
【場 所】  高田酒造倉庫 (倉吉市仲ノ町789)
【出 演】  門脇大輔 他(織田祐亮 tp、滝本成吾 kb、関谷友貴 bs、伊藤隆郎 drm)
【入場料】  大人2,500円 学生2,000円 (ワンドリンク付)
【主 催】  DOZO de Live at Home実行委員会
【共 催】  鳥取大学地域学部(地域文化学科、附属芸術文化センター)
【協 力】  NPO法人サカズキネット、NPO法人未来
【後 援】  倉吉市、倉吉市教育委員会、新日本海新聞社、日本海テレビ、
日本海ケーブルネットワーク

 当初、鳥取大学地域学部地域文化学科主催としてスタートしたが、会計処理上の必要から、NPO、行政、その他の地元有志を加え、新たに実行委員会を構成した。また、鳥取大学地域学部は共催団体としてこの企画に関わることとなった。 

 実行委員会の構成(12名)は以下の通り。
  野田邦弘 (鳥取大学地域学部教員) 古川哲次 (中華コスプレ日本大会実行委員長)
  榎木久薫 (鳥取大学地域学部教員) 清水眞理 (NPOサカズキネット)
  長柄裕美 (鳥取大学地域学部教員) 石川達之 (NPO法人未来)
  油本ゆみ (鳥取大学地域学部学生) 八代慎一 (NPO法人未来)
  中田まり子(鳥取大学地域学部学生) 種子真一 (倉吉市役所)
  本田聡子 (鳥取大学医学部学生)  荒井喜江 (倉吉市役所)  

3)地元の協力

コンサート開催にあたっては、地域住民をはじめ、様々な立場の方々から協力をいただいた。
○高田酒造:会場の無料提供とドリンクの仕入れ
○倉吉市役所:広報(市報)、会場案内看板(12枚)の作成および設置。
椅子(約220脚)、テーブル(4台)、ストーブ(12台)、電気ドラム(2巻)の貸し出し
○NPO法人未来:電気ドラム(2巻)、スタッフ用名札(15個)の貸し出し
○パルス建設:暗幕設置、電気ドラム(2巻)
○東伯中学校:暗幕の貸し出し
○(株)赤瓦:会場入り口への通路を照らす照明として瓶灯篭の貸し出し
○「山陰KAMIあかり」実行委員会(11月18日実施):会場内の照明として灯篭の貸し出し
○トミヤ楽器店:当日のPA担当

ケータリングに関しては、アーケード街周辺の飲食店に依頼した。協力店舗は以下の通り。
 ○武羅雲(コーヒー、サンドイッチ)
 ○茜屋(コーヒー)
 ○ネヴィカ(コーヒー、シフォンケーキ)
 ○ナショナル会館(昼食、交流会)
 ○万よし(出演者昼食)

 また、打吹地区を中心に、広く中部地区の店舗等から、広告という形で支援をいただいた。
協力22店舗は以下の通り(アイウエオ順)。
○あんどう      ○オークランド    ○オリゼン包装   ○きぬがさ
○ぎゃらりぃ和    ○桑田醤油醸造場   ○こがね      ○彩花
○清水庵       ○鳥飼内科      ○TSUTAYA    ○NOSIDE
○ひかり調剤薬局   ○永川商店      ○Big Time     ○100満ボルト
倉吉本店
○For You       ○ふしみや    ○ボストン洋菓子店    ○マッチョイ 
○米澤たい焼店   ○よしい歯科

4)開催結果

地元倉吉を中心にチケット販売は好調に推移し、当日は予想を遙かに上回る観客が来場したため、会場内は立錐の余地もないほどの盛況となった。来場者アンケートを実施し、合計182名の回答を得た(回収率58%)。それによると、来場者の4分の3が女性で、10代、20代、30代が50%を占めるなど若い女性の比率が多かった。どこから来たかをみると、半分が倉吉、4分の1が県中部であり、地元の人たちの比率が高かった。コンサートをどうやって知ったかをたずねたところ、6割以上の人が「知人から」と答えており、口コミで情報が広がったことがうかがわれる。

 

【入場者数】 ※招待者3名を含む

  大  人 学生以下 合  計
昼公演 109※ 15 124
夜公演 149 44 190
合計 255 59 314

 

5)評価

【アンケート結果】
ア)会場について
 アンケートによると、コンサート会場となった酒蔵についての感想は、次のような結果となった。

○「良かった」と答えた人の意見
・とてもやさしく懐かしい。土のにおいがして最高。
・近所で気軽く参加できた。
・明かりがきれいだった。昔らしさがあった。
・後ろの酒樽がいい。
・変わっていてかっこよかった。
・アロハホールより、酒蔵のようなアットホームな所が、とっても感じが伝わります。
・もし次回があればスタンディングでも良いのでは。人数も多く入るし。
・雰囲気が良かった。音響も思っていた以上に良かった。
・古きよき街、倉吉のことが少し見えた。打吹公園と博物館にしか来たことがなかった。
・堅苦しくないし、自分のふるさとを感じることができたから。秘密基地みたいだった。
・こんなところで聴くのは初めてで新鮮だし、おもむきがあると思った。
・酒蔵でのライヴで落ち着きとジャズが妙にマッチしてとてもよかった。
・古いものを大事にという気持ちと、奏者が身近に感じた。
・土蔵があったかい感じがした。手作りなところが良かった。
・蔵のイメージが変わった。特にアーケード街の活性化につながればと思う。
・雰囲気がとても曲にあっていました。
  
○「普通・良くなかった」と答えた人の意見
・寒い
・トイレが・・・
・ステージが欲しい。後ろから見えにくい。
・駐車場が遠い、少ない。
・出入り口の外が暗く、足元が見えなくて危険。明かりが欲しかった。

イ)音響について
音響効果について、6割以上の人が良かったと答え ており、おおむね好評であった。
ウ)サービスについて  学生ボランティアのカウンターサービスについての感想も7割近くが良かったとの回答があった。
エ)再来希望 【 また来たいですか 】
 またこのようなコンサートがあれば来たいかについてたずねた結果は右のグラフの通りである。

  ○「はい」と答えた人の意見
・倉吉ではなかなかないから
・なかなかないライヴ形式なので是非来たい。
・リラックスできる。
・市民の集いの基
・参加しやすい。
・トークも含んだコンサートで面白かったから。
・アットホーム、アーティスト、音楽が手に届くところにある。
・ホールやライヴハウスよりお気軽な雰囲気が気に入りました。
・近いし、規模が大きすぎず小さすぎず良いから。
・今回値段と内容がつりあっていて(結構お得感あり)良かったから。
・地元出身のアーティストであれば、ローカルながら支持層があると思う。
・もう一回聴きたいから。
・鳥取ばんざい!地元をどんどん盛り上げて行きたいです!

【出演者コメント】
来場者のみならず、演奏者からも肯定的な評価が寄せられた。演奏者を代表して、門脇大輔氏から次のような公式コメントをいただいた。
「今回、初の土蔵ライヴに出演出来たことは、僕にとって非常にプラスになりました。あの日、倉吉で、僕たちの『新しい音楽』を聴く為に、『由緒ある白壁土蔵群』に約300人近くのお客様が集結したという事実。 それは、故郷倉吉の活性化の一環として、記念すべき第一歩だと実感しました。僕自身、土蔵でライヴを行ったのは初めてでしたが、意外と天井の高い土蔵は音楽をやるのにぴったりで、しかも、たくさんのスタッフの方々の協力もあり、照明、音響設備も整い、何よりたくさんのあたたかいお客様に囲まれて、その独特の空間の中でとても楽しく素直に自分の音楽を表現出来たと思っています。今、僕は東京でミュージシャンとして活動していますが、忙しい毎日の中、危うく忘れそうになっていた『音楽を楽しむ』という心を、あの日、土蔵ライヴで改めて思い出した気がしました。また地元鳥取県で、あのようなあたたかいライヴが実現出来る事を願っています。」

 【学生の感想(抜粋)】
当日会場運営に関わった学生ボランティアにも貴重な体験だったという感想が多かった。
貴重な体験をしました。音楽と高田酒造倉庫がとてもマッチしていて、あの空間にいることそのものが幸せでした。もし、またこのような機会があったら是非参加したいです。
雰囲気もとても良かったし、倉吉市の職員の方やいろいろな人と一緒に参加できてよかった。
多くの方々と協力して作り上げていくことのわくわくした気持ちは、大きな思い出になりました。

【広報およびマスコミ取材等】
文字広告:NHK鳥取放送局、日本海ケーブルネットワーク(2006年11月第3週)
倉吉市報(2006年11月15日掲載)
日本海新聞(2006年11月22日掲載、添付資料参照)
当日取材:朝日新聞、日本海新聞
録画・放映:日本海ケーブルネットワーク(当日および2006年11月第4週)

6)考察と課題

打吹地区商店街の古い倉庫を活用して行った今回のイベントでは,予想を遙かに超える来場者を迎え,対応に苦慮するほど盛況であった。人通りが少なく衰退する商店街に,一日にして300人以上の人が訪れたこと自体,画期的なことである。商店街そのものに初めて足を踏み入れたという来場者も多く,高田酒造倉庫という歴史に育まれた空間と,門脇氏たち若いミュージシャンの演奏という組み合わせの「意外性」を楽しんだとの声が多く寄せられた。古い土壁と灯籠の灯りが醸し出す独特の暖かさが,彼らの奏でる新しい音楽の舞台として場を盛り上げた。演奏中に門脇氏が語ったように,このイベントを通して,高田酒造倉庫という空間が新たな目で見直され,人々の心に一つの新しい記憶として共有されたとすれば幸いである。
今回は、通常のコンサート企画に加えて、コンサートホールではない会場をコンサート会場に作り上げることに伴う数々の困難に直面したが、それぞれの実行委員がその人ならではのアイディアを出し合い、足りないものを提供し合うことによって実現にこぎつけた。会場のイメージ作り、設営プラン作りから資材調達、会場内外の環境整備、労働力提供に至るまで、特に地元スタッフの実働に負うところが大きく、これを抜きには、イベントの開催そのものが困難だったと考えられる。また、実行委員会スタッフには名前が挙がっていない多くの理解者・協力者の存在も忘れてはならない。当日スタッフとして働いてくれた学生ボランティア、チケット販売と広告の取りまとめにご協力いただいた地元個人店主、その他、多くの方々の有形無形のサポートがあっての結果であった。
今回のイベント運営の経験が、新たな企画の構想へとつながることを期待している。今後、DOZO de Live at Homeが継続開催される場合、運営の中心を大学スタッフから地元スタッフへとシフトすることによって、より地元に沿った企画が、各方面の協働のもとに実現する可能性は高いと思われる。また、学生を含む若い人たちが企画運営から関わることによって、さらに柔軟な発想で若い人たちを惹きつける企画が生まれる可能性もある。大学には今後もこのような企画に積極的に関わり、若い人と地域をつなぐ役割が期待される。
今回、地元にこのようなイベントのニーズがあること、イベント運営に携わる人的資源があることは感じたが、この倉庫を継続的にイベント会場として活用するためにはいくつかの課題があることもわかった。例えば、今回のように時期によっては暖房が必要であり、今回はストーブを借り、大きな出入り口をシートで覆って対策を取ったが、このプロセスを毎回取るのは非効率である。もう一つソフト面で、電力について、今回はたまたま容量内で収まったが、様々な形のイベントを柔軟に考えるためには、ある程度の余裕のほしいところである。また、隣家と近接しているため、防音対策も必要である。今回は、幸い、近隣5軒の住民の方々がイベントに理解を示してくださったが、継続的に音がすることになると、事情が違ってくることが予想される。アンケート回答にもあったように、最も差し迫った問題は、一つしかない旧式のトイレである。今回は、倉庫外部の近隣の公衆トイレの利用で次善の策を取ったが、トイレの整備によって数と構造上の問題が解決されれば、倉庫のイベント会場としての機能性は飛躍的に高まると思われる。なお、今回は少し離れた市役所駐車場を案内したが、駐車スペースの不足についてはアンケートにおいても指摘があった。観光用駐車スペースの拡充と併せて、対応が必要であろう。
このように、特に環境整備においては必ずしも十分な準備で来場者を迎えられたとは言えないが、様々な不自由にもかかわらず肯定的回答が目立ったことは、このようなイベントに対する地元の強いニーズのあらわれと考えられる。環境整備を進めることによって、この倉庫の活用可能性は一層拡大するであろう。

(文責:長柄)

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