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3-2.「ダンス・ワークショップ」による公共施設(廃校を含む)の活用

野口体操を基にしたダンス・ワークショップの開催

0.はじめに

誰もが参加できるダンス・ワークショップを、廃校、旧庁舎など機能の異なる場所を活用し、3回にわたり実施した。
 今回のワークショップの基盤となっている「野口体操」は、東京芸術大学の体育の先生であった野口三千三氏(1914~98年没)が、創出した体操である。体の力を抜く具体的な方法で、そこから無理のない動きを作り出す。重さに従うこと、自然界に学ぶなど、独自の身体哲学として知られる。演劇、オペラ、医療、教育、哲学の世界などではよく知られており、また他者とのコミュニケーション能力や身体への関心が深まる昨今、一般の人にも非常に注目されている。しかしながら、その実際を知る機会は、地方ではなかなかない。野口氏に直に師事した新井英夫氏を招聘し、野口体操を紹介する意義は大きいと考えた。
 内容については、自分の体をほぐし、他者との関係を結び直すことを基礎にしながら、や参加対象によっては、さらに身体表現にまで発展させていくなど、それぞれのワークショップで多少バラエティを持たせた。
 また、3回それぞれに、異なる場所を利用することで、低未利用空間の活用についての問題点を抽出、課題を検討した。以下、事業概要と各回ワークショップの意義と課題について、開催順に整理した。主催はいずれも、鳥取大学地域学部附属芸術文化センターである。

1.「野口体操ワークショップ」

○実施日時 2006年10月19日(木) 午後7時~9時
○会場 旧勝谷小学校(鳥取市鹿野町宮方149-1) 2階教室
○参加者 15名 

○ワークショップの内容

野口体操のキーワードでもあり、思想の中核でもある「自然界に学ぶ」「力を抜くと力が出る」「重さに従う」ということを、実際に自分のからだを使って体験した。布やポリフィルム膜、子どものおもちゃ等身近なものを使って、そのイメージを共有した。野口体操の入門的かつ本質的な体の使い方である、「ぶらさげ」「ねにょろ」などの動きを体験した。ワークショップは、講師と参加者の対話も含めながら、「力を抜く」ことを中心に行われた。

○事業成果

・近年注目を浴びている「野口体操」を鳥取において紹介する契機となった。
 ・声楽を専門に仕事をする人、スクールカウンセラー、ダンスをしている人、市民ミュージカル参加者、一般事務職など、多様な参加者を得た。男性の参加者も3分の1あった。
 ・廃校教室の利用については、「学校は懐かしい雰囲気がある」「味わいのある場所なので、もっと文化的な活動に使うべきだ」「教室というこじんまりした空間が、神経を集中させるのに良かった」という好意的な反応が大半であった。

○低未利用空間の利用にあたっての問題点
 ・現在、旧勝谷小学校は、日中校舎の一部を不適応教室として利用しているが、廃校後の暫定利用であるため、利用にあたっては、通常の施設利用と異なり、水道開栓、鍵の授受など煩雑な点があった。
 ・現在利用されていない場所であるため、地図に掲載されておらず、参加者から場所に関する問合せが数件あるなど、場所が分かりにくかった。
 ・冷暖房器具がないため、暖房の必要性については気を使ったが、結果としては日中好天であったため、教室内は十分に暖かかった。
 ・利用されていない教室であったため、事前に数度掃除用具を持参し、教室内荷物の整理や床掃除等の準備に時間と人手を要した。
 ・学校、教室の利用は、ワークショップ内容とも関連し、雰囲気としては、参加者には好評であったものの、単発のワークショップ利用では、事前準備、利用に係る手続きの煩雑さは負担である。
・このような場所を活用していくには、基本的な管理運営母体が欠かせないと考える

2.「ほぐす・つながる・つくる~野口体操から体のワークショップへ」プログラム1

○日時 2006年12月17日(日曜日) 午後1時~4時
○会場 旧鹿野町総合庁舎3階会議室(現在 鹿野町総合庁舎)
○参加者 20名 

○ワークショップの内容

10月のワークショップとは参加者が重なっていなかったため、野口体操の基本的な考え方を中心に進めた。前回よりも、詳しい解説にも時間をとって、参加者の理解を促した。

○事業成果

・男性の参加者が一名のみであったが、年齢は20代から60代まで、参加動機も多様であった。
 障害のある方の参加もあり、野口体操の包容力を参加者が共有することができた。
・ワークショップの内容については、大変好評で、継続的な講座を希望する声が多かった。また、今回は無料であったが、これだけの内容であれば、有料にしてでも開催すべきとの意見もあった。

○低未利用空間の利用にあたっての問題点

・会場は、平成16年の市町村合併以後、鳥取市鹿野町総合庁舎となった旧鹿野町庁舎の議会施設である。議場の隣にあたる会議室で、現在利用されていないが、建物自体は、一階部分は総合庁舎事務室として利用されている。当日準備は、休日出勤している市職員の協力を得た。
・事前準備については、床の掃除、什器(本棚)の移動整理等が必要であったが、市職員の方々が協力して下さった。また、結果として暖房が効かなかったため、やはり市職員の方が、ストーブ等を用意して下さった。いずれも、使われなくなった旧町の施設を何とか活かしたい、という気持ちがあるので、利用を歓迎するとのことであった。
・当日は、通常の建物出入り口が休日で使えないため、通用口を使ったため出入り口表示や、3階会場までの動線などの表示が必要であった。しかし、現在も庁舎と利用されている施設であり、建物の認知度が高いためか、会場に対する問合せは無かった。
・こうした会場利用に関する感想を参加者に求めたが、事前清掃によりきれいに整理されており、また床も絨毯敷きで身体ワークショップには使い勝手も良く、通常の会議室的な雰囲気で目立ったところが無かったためであろうか、施設に関して改めての感想、意見は聞かれなかった。

3.「ほぐす・つながる・つくる~野口体操から体のワークショップへ」プログラム2

○日時 2006年12月17日(日曜日) 午後5時~7時
○会場 八東体育文化センター 2階すみれホール 
○参加者 38名

○ワークショップの内容

プログラム2は、NPO法人ハーモニーカレッジの協力を得て、子どもと大人が一緒に参加できる内容とした。乳幼児も含め親子、学生ボランティアらが大勢参加した。「野口体操」そのものよりも、体を使ってコミュニケーションすることに重きを置き、最後にはグループで身体を使った表現を創って評価しあう内容とした。

○事業成果 

・短い時間ではあったが、体をほぐすこと、力を抜くことから、次の表現につながるというプロセスの体験と、共同作業による表現の楽しみの一端を提供できた。
・小学生から高齢者まで、一緒になって身体を楽しく動かすこともできる、という野口体操の可能性を共有することができた。
・やはり、継続的に開催して欲しいという声が聞かれた。

○低未利用空間の利用にあたっての問題点

・会場は、八頭町合併直前に八東町立で建設された会議室・調理室・アリーナなどを持つ体育・文化施設であるが、貸館利用のみで、その稼働率も低い。管理者は常駐しておらず、利用手続きは、施設ではなく、町の教育委員会へ行かねばならない。
・施設は充分新しく、設備も整っているので、利用者を開拓する積極的な方策が求められる。

4.今回事業の意義と課題~3カ所でのワークショップを通じて~

○事業内容について

参加者の満足度は高く、有料にしてでも定期的な開催を望む意見もあり、野口体操を基にした新井氏のワークショップを紹介した意義はあった。特に、ダンスや演劇をするためだけの身体訓練の方法としてだけではなく、コミュニケーション能力や身体感覚と深く結びついたものであることから、福祉や学校教育の現場にも活用できることが参加者にも理解された。今後とも、何らかの形で、継続的にこうした機会を提供する方策を検討していきたいと考える。

○低未利用空間の活用について

大学が主体となって取り組んだが、3ヶ所とも単発的な利用となり、その場所を主体的に活かしていこうという運営・活用母体を創出するまでには至らなかった。低未利用空間を活用して行くには、まずは利用へ向けた関係者の調整、場所の整備などに時間と労力を要する。そうした負荷を超越するような、インパクトのある企画が必要であった。

5.参考資料

○講師略歴 新井英夫氏 ダンサー / 体奏家 / 野口体操・身体ワークショップ講師
1966年埼玉県生まれ。89~98年まで自然からの哲学および身体メソッドとしての「野口体操」を創始者野口三千三(元 東京芸術大学名誉教授)に学ぶ。投げ銭方式の野外劇や都市部廃校体育館での公演など地域活性化を標榜した演劇活動主宰を経て、97年よりダンス公演活動を始める。国内外での舞台ソロ活動に加え、国際共同制作にも多く参画。既製劇場空間での公演とともに「風景の再生」をテーマとしたサイトスペシフィクダンス(ダンスによる劇場以外の建物空間・自然空間活性化の試み)を得意とする。また次代に向けた市民参画型バリアフリーアートの可能性開拓として、また、からだからの自然に則した生活哲学の提案として、老人施設や教育現場等での野口体操・身体表現ワークショップを精力的に展開中。山形大学地域教育学部 非常勤講師

(執筆3-2:五島朋子)

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