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6.オルタナティブ・スペースの創出へ向けた課題と方策

6-1.低未利用空間の情報化と資源化

(1)低未利用空間情報の収集と集約
 特に民間所有の建物、住宅や個人商店等は、活用可能性のある空きスペースとして情報化されにくい。県内で、民間の空きスペースをカフェや、ギャラリーに活用している事例も、空家・空き店舗の情報は、自分の足で歩いて探し,最終的には人の紹介や口コミで得たとのことであった。
 智頭町、鹿野町、岩美町等では、自治体がこうした空家情報の収集を行っている。鹿野町が行った空家調査は、合併後の鳥取市へ引き継がれるということだが、基礎的自治体による空きスペースの調査と情報収集が必要である。その際、鳥取市の中心市街地の活性化へ向けた早稲田大学の基礎調査のように、研究機関等との連携も求められる。
 また、各自治体で収集された情報は、ウェッブ上などで、集約し、アクセスしやすい情報源とする必要がある。

(2)借り手と貸し手の間を繋ぐ情報提供の工夫

 筆者らが行った数名へのヒアリングからも、田舎の民家、市街地の町家など歴史を感じる空間に住みたい、あるいは市街地の空き店舗で開業したい、という意向を聞くことがあった。また、例えば、県外で活動する美術作家からは、そもそも県内や国内に向けてではなく、海外で発表する作品を制作しているので、作業場所(アトリエ)が確保できれば、むしろ自然ゆたかな環境で仕事をしたい、という意見もあった。価値観が多様化し、独自の暮らし方や活動を展開したいと考えている層は潜在的にいる。
 集約した低未利用空間の情報を、どのような人を対象に、どのような媒体を通じて提供していくのか、マーケティング的発想と戦略が必要となる。
 
(3)鳥取県における活用事例の情報化と検証

 民間の空家や空き店舗はたくさん有るが、「なかなか貸してくれない」という声も、よく聞かれた。過疎化、中心市街地の衰退、また産業基盤や交通網の問題も有り、そもそも地域外、県外からの人口移動が少ないためか、外から来た人への警戒心は強くて当然ではあるだろう。しかし、衰退する商店街の空き店舗、過疎化する地域の空家を、需要があるのに、そのまま個人の都合で放置しておくというのは、地域社会の一員としては許されない状況に成りつつあるのではないだろうか。
 もっとも、持ち主がすでに県内に居住していない場合も多いようであるが、低未利用空間の活用へ向けた雰囲気の醸成が必要であると思われる。すでに県内で活用されている事例を積極的に紹介し、商店街の活性化や地域まちづくりへ、どのような波及的効果が出ているのか、先行している活用例の意義を評価する顕彰事業などが構想されてよい。

(4)自治体の仲介や支援

 持ち主が、「貸したくない」という背景には、様々な理由があるようである。しかし、持ち主と活用主体の間に、自治体等公的な組織が紹介・仲介することで、新参者への警戒心や隣近所への遠慮や見栄といった問題点の多くは解消することが期待される。例えば、智頭町の風人洞ギャラリーは、町が仲介的役割を果たして、県外出身者による民間空家の活用が可能となっている。契約内容等も含め、自治体など公的組織で定型的な仕組みを作れば、若い世代や、こうしたことに不慣れな人にとっても、空きスペースの活用の機会が生まれると思われる。
 このような自治体の仲介には、もちろん、活用主体の側の活用目的や活用内容について、一定の方向性や基準を設ける必要があるであろう。

6-2.活用内容の豊富化とひろがりの創出

 (1)先行する各地の活用事例の紹介と情報の共有

 本稿で取り上げた各地の先行事例は、筆者らが利用者として現場に足を運んだり、一緒に事業に関わる等、運営主体と既知の関係で実体的で臨場感のあるデータを得られるものを中心に取り上げている。低未利用の空間資源をどのように活かしていくかは、多くの地域にとって、共通する課題となっており、筆者らところへは、次々と、新しいオルタナティブ・スペースの情報が飛び込んで来ている。
 先行事例には、活用手法、活用内容、運営方法、財源の獲得等、それぞれに工夫されている。こうした事例をヒントにしながら、鳥取における可能性や活用方法を見いだしていくことが重要である。そのために、先行する事例の情報化と、市民へ向けた情報提供を筆者らが担っていく必要があると考える。

 (2)活用検討プロセスを公開する

 廃校や余り活用されていない公立文化施設、あるいは地域の多くの人にとって愛着のある建物等、公共的性格の強い低未利用空間の活用検討については、その検討プロセスに多くの市民、関心の有る人を交えた議論の場を作って、活用内容の広がりを得る工夫が必要である。場合によっては、県外、海外の人材を巻き込んだ検討プロセスや、広く公募で活用案を募るなど、関心を高めることで、活用内容のアイディアを豊富化する。

 (3)芸術文化活動を核とする活用内容の広がりを確保する

 芸術文化による活用を考える場合、大きく以下の3つの柱が考えられる。
   ・発表の場(展示や公演)
   ・創造の場(制作や稽古)
   ・交流の場(アウトリーチやまちづくりとの連携)
 さらに、県内の文化活動者の場所(アマチュアの活動)とするのか、外へ向けた芸術文化活動の育成と発表の場(プロの創造活動)とするのか、交流機能として鑑賞者開発に力を入れるのかその方向性によって活用内容はより多様化してくるはずである。

6-3.運営組織・人材の育成へむけた支援が必要

(1)企画運営を担うNPOやボランティア等多様な運営主体の育成と支援

 多くの先行事例を見ると、オルタナティブ・スペースの運営主体は、自治体、民間会社のほか、民間の任意団体やNPO法人等、その成立過程も含め実に多様である。一方、鳥取の活用現況では、運営主体の世代や内容がまだまだ限定的である。一方、既に芸術や文化をテーマに活動している団体や個人は存在しており、こうした人的資源を、自主的なオルタナティブ・スペースの運営母体として育て、支援していく必要がある。NPOやボランティア団体の情報交流を促し、研修機会を提供する、NPOを支援する拠点の形成・支援施策の拡充が求められる。
 
(2)専門的な芸術文化活動と地域を結ぶコーディネーターの必要性

 先行事例には、いずれにも鑑賞者、あるいは子どもや高齢者、また商店街や住宅地等オルタナティブ・スペースを取り囲む地域と芸術文化とを結ぶような、事業を企画運営するコーディネーター的な人材が存在している。活用後の活動内容に広がりを持たせる、または、活動内容を質が高く、特徴的なものにしていくための専門家である。
 そのような、アート・コーディネーターやプロデューサーを地域でも育てていく必要がある。また、県外、コンペティションなどにより場合によっては海外から招くことも考えられる。

(3)県内外、地域間の人材交流を促す必要性

 地域でのアート・コーディネーターを育てるためにも、県外各地で活動する芸術NPOやアート・コーディネーターと、鳥取県の人材との相互交流を促す必要がある。

6-4.活用空間のデザインへの配慮

 低未利用空間の活用は、単に整備費をかけない施設利用ではない。歴史を刻んだ空間には,新築の建物では持ち得ない雰囲気があり、市民の共有の「記憶」を形成し、まちづくりの求心力として働く可能性がある。そうした既存の空間を生かしながら、新たな活用内容を表現するためにも、改修や活用整備には、よりいっそうのデザイン性が求められる。魅力的なデザインによって、若い世代をこうした活用に巻き込むことができる。
 先行事例の多くも、新たな活用にあたって、手を加えるところとそうでないところのメリハリをつけ、既存部分と新設部分の調和、素材や色の選択等に配慮がある。優れたデザイナーや建築家の関与が必要である。
 また、青森の空間実験室や、にしすがも創造舎のように、既存の建物外観にほとんど手を入れていないところ等は、サインや看板、あるいは壁にデザインされたバナーをかけるだけでも、すっかり印象が異なり、刷新された雰囲気をつくり出すことができている。
 デザイン教育を行っている大学との連携や、地域のデザイナー達へプロポーザルを求めるなど、鳥取らしいデザインを際立たせる必要がある。

6-5.政策的な位置づけが必要

○地域の歴史を刻んだ施設は住民の共通の記憶を形成している。たとえ文化財的価値が低くてもこれらを保存、改修して活用することで地域活性化の可能性があること。
○都市部、中山間部とも集会施設等の公共施設は基本的に整備されていることから、これら低未利用空間の活用法や運営手法については、既存公共施設と競合しない者を目指すべきである。
○具体的には、文化創造機能や地域コミュニティの活性化、などが想定される。
○低未利用空間の活用検討に際しては、住民のボランタリーな活動を活性化させることにより住民自身が運営に関わるようなスキームを時間をかけながら模索すべきである。
○これらは、プロデューサー、コーディネーター、デザイナーなどが企画構想段階から関わることが成功の鍵といえるが、このような人材が地元で見あたらない場合は、全国から公募をすることも必要である。
○総じて、低未利用空間を所有管理する自治体にこれら地域の文化資源(文化資本)活用し、地域を活性化させる総合的な政策の検討が求められる。

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