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5.国内の低未利用空間活用事例

5-1.事例概要

 本章では、国内各地での低未利用空間を芸術文化で活用しているもので、特に、空間活用方法、活用内容、運営主体等の点に特色がある事例を紹介する。さらに、建物だけではなく、空間を芸術文化プロジェクトに活用し多彩な波及効果を上げている事例と、こうした低未利用空間の芸術文化による活用を促す北海道庁の事業制度を取り上げた。事例は以下の通りである。
 (1)廃校
    京都市芸術文化センター(京都市)
    にしすがも創造舎(東京都)
    アルテ・ピアッツア美唄(北海道)
    精華小劇場(大阪市)
 (2)銀行・事務所建物
    アートコンプレックス1928 (京都市中京区)
    BankART(横浜市)
    ルネスホール(岡山市)
    山小屋ギャラリー(広島市) 
 (3)商店街空き店舗
    空間実験室(青森市)
 (4)空き家
    佐久島(愛知県)
    利賀村(富山県)
 (5)産業遺構
    金沢市民芸術村(石川県) 
 (6)その他 
    みどり会館 (山口県)
 (7)プロジェクト型
    越後妻有トリエンナーレ(新潟県)
    コールマイン田川(福岡県田川市)
 (8)助成制度
    北海道 地域文化ネットワーク形成促進事業

 ここで先んじて、以上の事例の特色を指摘しておくならば、大きく以下の3点にまとめられる。

〈1〉活用へ向けた検討プロセスへの参画

 廃校、または銀行建物で保存された近代建築など、自治体が所有している低未利用空間の場合、活用後の運営主体となる創造団体やアーティスト個人が、その検討プロセスから参加し、継続的な活用に至る前に、試行的に様々な事業を実践していることが多い(京都芸術センター、精華小劇場、ルネスホール等)。既存のスペースだからこそ、試行的な事業や実験的な試みが可能であり、そのなかからその後の運営団体そのものが育っている。
 また、民間所有の場合は、所有者個人と、活用主体の個人との出会いから活用につながっている。ある空間とそれに魅力を感じるアーティスト(あるいはコーディネーター)が、出会うきっかけは、効果的な情報の集約と発信によって醸成されていると思われる。アートコンプレックス1928や山小屋ギャラリー、みどり会館は、そのような出会いがきっかけとなって、活用につながっている事例である。

〈2〉活用内容のひろがり

 芸術文化活動を核とする活用内容には、大きく以下の3つが考えられるであろう。
 ・発表の場(展示や公演)
 ・創造の場(制作や稽古)
 ・交流の場(アウトリーチやまちづくりとの連携)
 国内事例を見ると、これまでの公立文化施設の中心的役割であった鑑賞の機会を提供するという「発表の場」という機能から、芸術創造団体や個人アーティストの制作や創作自体を支援する「創造の場」としての機能を充実させている活用事例が少なくない。京都芸術センター、にしすがも創造舎、金沢市民芸術村、BankART、空間実験室などである。また、これらの活用事例では、個人や団体に稽古場・制作場所を貸し出す場合でも、単なる申し込み制ではなく、活動趣旨やプロポーザル、地域還元の事業提案を含めた提案をふまえた選考による制度をとっていることが多い。「創造の場」の提供を通じ、芸術文化を担う人材育成までが目指されている。
 そもそも、ホールや展示空間を運営団体以外に貸し出す「貸館事業」よりも、運営団体のミッションや役割に則って、主体的に事業を企画構想、運営する自主事業に重きを置いているということがわかる。
 さらに、廃校のように、かつての地域コミュニティの核であり、地域住民ならば誰もが通った記憶の場所の活用については、多くの場合、中心的な活用内容と同時に、地域住民が関われるような「交流の場」としての機能を持っていることが多い。地域コミュニティを巻き込んだ事業企画の実施(にしすがも創造舎、みどり会館、山小屋ギャラリーなど)のほか、カフェや図書室など誰もが気軽に立ち寄る機能が備わっている例も多い(京都芸術センター、アルテピアッツァ美唄、金沢市民芸術村など)。
 過疎の島・佐久島や中山間地を主要な舞台とする越後妻有トリエンナーレでは、地域の活性化、内外人口の交流を主眼として、芸術文化により空きスペースが活用されている。利賀芸術公園は、当初特定の創造集団の活動拠点として始まったものが、結果として過疎地の観光資源、文化資源となっている。
 
 「発表の場」を主たる機能として活用している事例で特徴的なのは、特定のアーティストによる活動の場として、その施設の個性が強烈に発揮されていることである。みどり会館の久保田修治、利賀芸術公演の鈴木忠志、アルテピアッツァ美唄の安田侃、コールマイン田川の川俣正、といった具合である。

〈3〉運営主体の多様性

 取り上げた事例では、民営となっていても、民間営利企業が運営している場所は少なく、多くは民間の任意団体か実行委員会のような連合体、あるいはNPO法人である。アートコンプレックス1928は、有限会社による運営であるが、良好な舞台芸術環境を整備してアーティストや創造団体を支援することを目的として活用を行っており、芸術文化環境整備や文化政策を担う主体が非常に多様であることがわかる。

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