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4.低未利用空間の活用現況に見る問題点

4-1.活用可能な低未利用空間情報が乏しい

 ライフスタイルの変化や郊外型店舗の拡充に伴う中心市街地の衰退、役場等の中心機能移転に伴う旧市街地の衰退、中山間地の高齢化、過疎化の進展により、市街地では空き店舗、中山間地では多数の空家が生じているのは、見た目にもあきらかである。しかしながら、こうした民間企業や特に個人所有の店舗、住居の場合は、その建物が実際に空いており利用されていないのか、また活用したいという人がいれば、貸してもよいという意向があるのかどうかまでは、わかりづらい。
 筆者ら行った聞き取りの中でも、市街地で新しく店舗を持ちたい、起業したいという個人から、シャッターのしまった商店であっても、なかなか貸してくれるところがない、あるいは例えあっても賃料が高くて手が出ないという声は少なくなかった。
 また、中山間地では、智頭町、旧鹿野町等の自治体が全町を対象に「空き家調査」を行っている。たとえば、智頭町では、県の中山間地活性化交付金を使って、平成14年に「空家調査」を実施し、確認できた空家127件のうち、79件から意向調査への回答があり、7件だけが貸しても良いという意向であったという。旧鹿野町も同様で、100件弱の空家のうち、売却や賃貸の意向が確認できたのは7件であった。自治体関係者や事業者らによれば、このように所有者が他者への賃貸や売却に消極的な理由として、以下があげられるとのことである。

○住んではいないが仏壇を置いている
○盆にはたまに里帰りする
○人に貸すからには、手を入れる必要がある
○他人に貸すほど困窮していると思われたくない
○他に収入源があり、所有地・建物から収益を得る必然性に乏しい。
○賃貸契約など手続が面倒と考えられること

 2005年11月内閣府の「都市と農山漁村の共生・対流に対する世論調査」では、都市に住む50代の約3割が農山漁村に移り住みたいと思っているという結果が出ている。(2006年2月18日毎日新聞記事)旧鹿野町では、町民ミュージカルへの長年の取り組みや町並み保存によるまちづくりなどの蓄積とその情報発信の影響からか、町外住民から空家の引き合いがあるとのことだが、上記のような理由から、実際に成約したケースは今のところないという。
 鳥取市の中心市街地川端商店街や山手の住宅地でも空き店舗や空家を活用して、若い人たちによる店舗、ギャラリーを設置した小店舗などの展開の動きが若干出てきている。また、関係者への聞き取りからも、市街地への出店や、居住の意向が伺え、潜在的な需要はあるものと思われる。
 しかし、貸す側も、活用したい側も、互いの情報が出会う場所が、既存の不動産会社の情報、もしくは非常に限られた口コミのみとなっており、両者のニーズが顕在化しにくい状態となっている。
 市街地での店舗活用、中山間地での空家活用は、中心市街地の活性化、過疎化への対策としても必要に迫られていると思われるが、まずは、活用可能性のある空間資源の情報集積とその的確な情報発信が基盤として必要である。

4-2.活用内容の展開に乏しい

 少子高齢化、過疎化、自治体行財政の効率化により、今後も鳥取県内では、廃校や使われない議場など、機能を終えた公共施設が数多く出てくると思われる。その中でも、小学校や中学校は、誰もが通ったことのある施設で、また成長期の重要な時期を過ごした場所であり、その活用についても、地域の拠点として様々な役割が期待されるところである。
 現在の鳥取東部での廃校活用内容を見てみる。文化的な活用という点では、イラストレーターのアトリエ、絵画教室、工芸教室などがあげられる。こうした教授活動を通じ、地域住民の交流の場や、観光客の体験施設といった地域活性化につながる展開も生まれている。また、いわみ工芸村は、運営団体が2005年よりNPO法人として登録、陶芸や織物などを趣味とする人への教授だけではなく、子ども達など、次の世代へ向けたアウトリーチ的な活動へも関心と広がりを向けている。また、アトリエ小学校も、夏期には、地域の子ども達向けに、運営者のイラストレーションの能力を活かして「お化け屋敷」を開設するなど、活動の広がりへ工夫されている。それぞれの活動団体独自のミッションを明確にして、より公共性の高い活動内容を生み出していくことが求められる。
 全国的に、廃校利用が注目されているのも、こうした場所を用いながら、単なる空きスペースを既存の事業や活動の場として利用するのではなく、廃校から新しい形の文化活動や事業を生み出しているからであると思われる。しかしながら、鳥取で多数空いている廃校利用を見ると、まだまだ多様な活用が考えられてよいと思われる。活用内容とその運営については、以下のような問題点が挙げられる。

○厳しい財政事情のためか、自治体側に廃校などの地域の歴史を刻んだ施設を保存活用し、地域振興の拠点として活用しようという姿勢がそれほど強くない
○活用内容についての多様な企画が乏しい
○活用団体や人材が限られているため、地域活性化につながっていない
○改修・改築工事、運営費などの財政に乏しい
○廃校を所有する自治体と運営を任されている者の間で、契約がなされていないなどの問題が一部で見受けられる
○文化創造の拠点として全国に情報発信するまでに至っていない
○地域の活性化にある程度貢献しているものの、地域外からの観光客など交流人口を引きつけている例は少ない

4-3.活用後の空間の魅力が乏しい/デザイン力

 低未利用空間を芸術文化で活用しようというのは、単に空きスペースを有効に活用するというだけではなく、建物そのものが持つ歴史、地域の変化や歴史を刻んだ背景、居住者や利用者の記憶など、新築の建物にはない雰囲気や味わいが発生するからでもある。しかしながら、当初の機能を終え老朽化した建物や、長らく利用されていなかった建物は、その利用や、利用を継続するためには、相応の補修やメンテナンスが必要である。また、新しい機能をもたらし、生き生きとした活動の場として活用していくには、どのような色や素材やデザインで、古い空間を新しく利用していくのか、工夫と知恵が求められるところである。
 活用事例として取り上げた中心市街地のカフェ3件は、いずれも特定のデザイナーによる空間プロデュースである。内部は、やや古びた空間に相応しい家具を配置し、外部は木材を使って独自の雰囲気を創出している。ギャラリー等を併設した商業施設であるから、デザインやイメージは重要な要素であるのは当然と言えるかもしれないが、その他の廃校やJA事務所の商業ベース以外の活用では、こうしたデザインや色への配慮がまだまだ希薄である。

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