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1.調査研究の背景と目的

1-1.調査研究の背景
1-1-1.鳥取県の課題

鳥取県の出生率は全国18位(1,000人当たり9.02人)であるにもかかわらず、生産年齢人口(15~64歳)の割合は全国42位(62.3%)となっており、若者の県外流出が起きており、県の活力を削いでいる。この背景には、雇用機会の不足の他、若者が働きたいと思う職種、就業形態、就業環境等が不足していることが原因と考えられる。また、若者を引きつける文化的な魅力が地域に乏しいのではないだろうか。
一方、鳥取市や米子市といった都市部においては、中心市街地の空洞化が進み都心の求心力が失われ、まちの活気が減少している。このような状況に対して政府もまちづくり3法(都市計画法、大規模小売店舗立地法、中心市街地活性化法)の改正などの対応をしようとしている。しかし、従来型の小売機能だけでは中心市街地の活性化は困難ではないだろうか。そこでは、居住者や来街者を増やす方策を総合的に検討する必要があると考えられる。学習、交流、福祉、文化といった多様な都市機能を複合的に中心市街地に配置することにより、若者も含めて「暮らして楽しい」まちづくりを進めることが求められている。
特に、地域イメージの形成にとって文化の要素は重要であり、今後の地域再生にとっては、経済と文化の両極を含んだ政策を検討していくことが課題となると考える。

1-1-2.これまでの文化政策の推移とその課題

一方、わが国の地方自治体の文化政策は、文化政策の理念を深化させないまま、従来型行政手法によるハコモノ整備が続いた。その過程でソフトを重視してこなかったため、施設運営や事業実施のノウハウといった専門性を育んでこなかった。このような中、90年代以降の国、地方における財政危機を背景とした小さな政府に向けた行政改革は文化政策にもおよび、公の施設を対象として指定管理者制度が導入されたため、文化政策を十分深化させてこなかった多くの自治体は指定管理者制度への対応に苦慮した。
 本県においても文化施設の整備や様々な文化事業が行われている。しかし、市民の自主的な文化活動(鑑賞、創作等)が必ずしも活発とはいえないのではないだろうか。また、これまでのように文化を鑑賞や体験の対象としてのみ捉えるのではなく、文化をより広範な文脈の中に位置づけなおし、その産業や雇用の創出や地域活性化といった機能が注目され始めた。地域固有の文化資源(文化資本)の創造性を活用した地域再生(まちづくり)の取り組みである。
文化の主役は市民であり、行政が果たす役割は環境整備等に限られることを考えると、民の知恵や力を十分に引き出工夫が求められる。これからの「公共」は、「官」だけではなく「官」と「民」の協働により形成されることとなろう。そのような意味において、NPO(特定非営利活動法人)の活動や成長を支援する施策が求められる。

1-1-3.今注目されるオールタナティブスペースの活用

製造業の衰退などにより活力を失った都市が、芸術文化の創造性を活用して都市を再生した事例が90年代以降EUの諸都市から報告されるようになった。これらの都市では、古い工場や倉庫など使われなくなった施設をリノベーションし、文化の創造拠点として活用していることが共通点である(この報告書では、このような使用されなくなった施設・空間を本来の目的ではなく、芸術文化のために活用している場合、その施設・空間のことを「オールタナティブスペース」と呼ぶ)。
ここでは、芸術文化を育むと同時に、21世紀の産業を牽引すると期待される「創造産業」(イギリス政府の定義によると、「個人の創造性、技能、才能に根ざしており、知的財産の開発や活用による福祉や労働の創出の可能性のある産業群。広告、建築、美術、アンティーク、工芸、デザイン、ファッション、映画、ビデオ、双方向娯楽ソフト、音楽、舞台芸術、出版、ソフトウエア、コンピュータゲーム、テレビ、ラジオ、など」)を育成し、新産業や新たな雇用を創出することが期待されているのである。また、このような施設は、重要な観光資源としても位置づけられ、外貨獲得に貢献している(海外の事例については本報告書でも事例を紹介した)。
 わが国においても、最近多くのオールタナティブスペースが誕生している。それらは歴史的建築物や産業遺構など地域の文化資源を保存活用している。これは、市民が共有する「まちの記憶」を大切にし、市民のアイデンティティを形成することに役立つ。文化財保護法の改正(平成8年)による登録文化財制度の導入に見られるように、国も文化財としての歴史的建築物等を従来のように単に保存するだけではなく、自由に活用し、地域活性化に役立てることを推進している。また、NPOがオールタナティブスペースを管理運営する事例も増えてきており、官(財団)による公立文化施設の管理運営モデルの対極をなすNPOによるオールタナティブスペース管理運営モデルが注目され始めている。

1-2.調査研究の目的

本調査は、現在使用されていない施設・空間(低未利用空間)=オールタナティブスペースにおいて、市民の自主的で継続的な文化活動を誘発、促進し、それにより文化の持つ創造性を活かした地域再生に貢献するための基礎調査として実施した。具体的には、文化活動の拠点として使うことのできる低未利用空間について調査を行った。その際、地域密着性、オールタナティブスペースの持つ魅力、市民の自発性誘発可能性、文化的質の高さ、他地域への情報発信性、若年層の巻き込み、などを重視した。



2.調査対象と調査方法

2-1.調査対象

調査は、現在活用されていない施設だけではなく活用されている施設(ただし従来の施設の目的とは異なる活用)も対象とした。文化など本来の施設の設置目的とは異なる活用をされているオールタナティブスペースについて、そのまちづくりに果たす役割などを調査し、現在は活用されていない施設・空間への適用の可能性を検証するためである。
記述に際しては、オールタナティブスペースの所在地について市街地か中産間地域など非市街地か、また、所有者および管理形態に着目して官か民かという分類を施し類型化を図った。

2-2.調査方法

現地視察と、管理者または運営者へのヒアリング調査により県内の低未利用空間の現状について把握につとめた。

2-3.調査内容

○所在地、施設概要
○(すでに活用されている場合)活用内容、活用開始年、施設所有主体、運営主体、事業開始に至る経緯、事業内容、今後の課題
○(活用されていない場合)旧用途、活動停止年、所有者、活用の可能性と想定される効果
○県や県内自治体がこの数年間行った地域再生を目的とした調査の把握


【参考文献等】
千葉雄二「鳥取県の経済・産業構造における課題」『TORCレポート』2005上/No.25(財)とっとり総合研究センター
鳥取県ホームページ「100の指標からみた鳥取県」
イギリス政府文化スポーツメディア省ホームページ

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